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皮膚病のトピック

千葉県皮膚科医会「皮膚病のトピック:蕁麻疹(じんましん)」のページです。
専門家による蕁麻疹(じんましん)のトピックをご紹介します。

蕁麻疹(じんましん)

常日頃よく耳にする蕁麻疹という言葉ですが、その実態は今一つ分かりにくいと思います。そこで蕁麻疹とは何か、について説明してみたいと思います。

蕁麻疹1
蕁麻疹:皮膚の表面が盛り上がって痒みがある
人工蕁麻疹
機械性蕁麻疹(人工蕁麻疹):強く擦った部分に一致して線状の蕁麻疹を生じる

蕁麻疹は皮膚に突然蚊に刺されたような赤い膨らみが生じ、多くは痒みを伴いますが中にはちくちくした痛みを伴ったりもします。数時間で跡形もなく消えてしまうのが特徴です。一般的に24時間以内に消えてしまうものを蕁麻疹といいます。

中には蕁麻疹様血管炎や血管性浮腫のように24時間以上続くものもありますが、こういったものはめったにありません。

大きさは1-2mmの小さいものから、手のひら大以上の巨大蕁麻疹もあります。

皮膚の浅いところの血管が拡張し、血管の透過性が高まって血液中の水分(血漿成分)が血管外に染み出るために皮膚はみみず腫れ状態になります。血管性浮腫も同様な機序で起こりますが、これは皮膚の深いところ(真皮下層や皮下脂肪織)で起こるために腫れが主症状で赤みがないこともあります。かゆみは少なくむしろ痛みや灼熱感が主症状になります。

これらの症状を起こさせるものの主役は皮膚の中にあるマスト(肥満)細胞というものです。特定の抗原(アレルゲン・・・ソバ、卵、カニなどの食物、薬、蜂など)が皮膚から直接、あるいは血流を通してマスト細胞に到達すると、細胞表面で抗原抗体反応を起こし、細胞内顆粒に蓄えられていたヒスタミンなどをはじめとしたさまざまな化学伝達物質を放出します(マスト細胞の脱顆粒)。ヒスタミンは神経に働き、痒みを生じさせ、血管を拡張させ、血漿成分を血管外に漏れ出させます。

この抗原抗体反応はアレルゲンを摂取後すぐに起きるためにⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)反応と呼ばれ、IgEといわれる免疫グロブリンが抗体となりますので血液検査で調べることができます。

ただし、このタイプの蕁麻疹の占める割合は全蕁麻疹のうちのほんの数%といわれています。ですから、すべての蕁麻疹にアレルギーの検査をする必要はありません。また施行する場合も臨床的に関与が疑われる抗原の種類をしぼり検査をすることが大切です。また魚などが原因の場合、アニサキスという寄生虫が原因であったり、多くの食品に含まれる非アレルギー性の仮性アレルゲンの場合もありますので、それらを考慮する必要もあります。
仮性アレルゲンとは免疫反応を介さずに蕁麻疹反応を起こす物質のことをいい、豚肉、古いサバ、マグロやタケノコなどヒスタミン類似物質を含むもの、果物、野菜、香辛料に含まれる天然物質や食品添加物なども該当します。

ではその他の多くの蕁麻疹はアレルギーではないのでしょうか。少なくともIgE依存性の特定抗原によるⅠ型アレルギー反応ではないそうです。

Ⅰ型アレルギーでない場合にどのようなしくみでマスト細胞が活性化、脱顆粒するかについての仕組みはまだ十分に解明されていません。

蕁麻疹の原因による分類は多くありますが、大きく分けると何らかの明確な刺激で誘発できる蕁麻疹(刺激誘発型蕁麻疹)と特定の誘発原因のない蕁麻疹(特発性蕁麻疹)があります。

刺激誘発型蕁麻疹には、上に述べたアレルギー性のものの他に、非アレルギー性の物理的刺激(寒冷、温熱、日光、圧迫など)や、精神ストレスも関与するコリン性蕁麻疹などがあります。

頻度としては、特発性の蕁麻疹が、70%、物理的蕁麻疹が10%以下、コリン性蕁麻疹が6%程度、アレルギー性蕁麻疹はわずかに5-6%程度とされます。

直接の原因ではなくても、寝不足、疲れ、ストレス、飲酒、刺激のある食べ物などが背景の悪化因子となる場合もありますので、これらを避けることも必要です。また熱いお風呂でごしごし擦るのは一時的には気持ち良くても後で悪化しますので避けるようにしましょう。

1か月以内で治癒するものを、急性蕁麻疹といい、それ以上続くものを慢性蕁麻疹といいます。

急性蕁麻疹では、風邪などの感染症が引き金になることも多く、慢性蕁麻疹では肝臓や胃潰瘍などの内臓疾患がベースにあることもあります。

蕁麻疹の治療は誘因を避けた上で、抗ヒスタミン剤(抗アレルギー剤)の内服が第一に用いられますが、補助的な薬剤も使われることもあります。

上記のような症状がある時は、皮膚科の医師に相談しましょう。

ただし、蕁麻疹の症状がひどくて、気分が悪くなって血圧が低下したり、息苦しくなったりする場合はアナフィラキシーといって生命の危険にかかわることもありますので、すぐさまに救急病院などを受診しましょう。(児島孝行)